
屋久島と映画もののけ姫について
ジブリ映画の一ファンとして映画もののけ姫と舞台となった屋久島を考察してみました。
屋久島に来る前にもののけ姫をを見ていただくとまた屋久島の自然も違って見えてくるかもしれませんよ。
参考にした文献:DVD「もののけ姫はこうして生まれた」スタジオジブリ、「ジブリの教科書もののけ姫」文春ジブリ文庫、スタジオジブリ絵コンテ集11もののけ姫、「屋久島文学散歩」かごしま文化研究所
●もののけ姫が問題としているテーマ
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子ども達の心の空洞
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不条理な病と差別の問題
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人間と自然との関係の問題
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憎悪と闘いに走る人間の業
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恐れを知る心と合理主義の対立
この5つをテーマに作品は作られています。色々な問題を含んだ奥が深い作品です。
簡単にストーリーを紹介すると
「荒ぶる神々と人間の戦い」
自然を支配し、自然から富を奪い取らんとするエボシを代表とするタタラ場の製鉄集団とそれに対抗する自然界の生き物達(もののけ)との壮絶な闘い、そしてそれをなんとか仲裁しようとするエミシの末裔アシタカ少年の物語。
●もののけ姫の背景となる時代設定は
室町時代。聖なるものへの恐れがうすれ都会への消費生活のあこがれが増大した・自然と人間の関係が激変した時代。
●もののけ姫だけではありませんがジブリ作品の特徴は自然の描写
宮崎駿監督/ベルリン国際映画祭でのインタビューより
美術が素晴らしいという質問に対して
「登場するキャラクターに従属して、そこに舞台として自然があるのではなく、自然があって、その中に人間があるという考え方をしているからです。
それは世界が美しいと思っているから。人間同士の関係だけが面白いんじゃなくて、世界全体、つまり風景そのもの、気候、時間、光線、植物、水、風、みんな美しいと思うから、出来るだけそれを自分たちの作品の中に取り込みたいと思って努力しているからだろうと思います。」
・背景細部の描写、人物の動きのリアリティは作品を支える力、厚みになっている。
●コダマって何?

豊かな森にしか棲まない森の精霊コダマ。森が精神的なイメージを持っていた頃のイメージを具現化したもの。
薄暗い森に踏み込んだ時の不思議な感じや誰かが後ろから見ているような、そういう気配のようなものを表現している。
見える人には見えるけど、見えない人には見えない。現れたり消えたりする、良いとか悪いとかを超えている存在。
アシタカ「好きにさせておけば悪さはしない。森が豊かなしるしだ。」
●屋久島へのロケハン
1995年5月と7月、2回に分かれて美術、CG、作画、制作などのスタッフを連れてロケハン(ロケーション・ハンティング:ロケ地を探すこと)のため屋久島に訪れている。
宮崎駿監督のコメントより「僕が日本というものに抱いていた妄想を形にする時に、スタッフに手がかりを与えるために行ったんです。僕は屋久島に行ったことがありますから、あそこはすごいです。普段、あまり自然に興味がない人でも感動しますよ。ぜひ、行ってみると良いと思いますね。」
美術スタッフは、空気の質感を感じたり、雰囲気をつかんだり、何かあたらしいものをつかんだりすることによって、自信を持って絵を描くことができたようです。
映画の中では、主にシシ神の森の描写に生かされています。
ちなみに屋久島では民宿「水明荘」に宿泊しました。お宿のロビーにはイラストとサインの色紙が飾ってありますので興味のある方は泊っても良いかもしれません。
●屋久島の自然とよく似ている場面
あくまでも屋久島の自然を参考に作られた映画ですので、屋久島の自然そのままというわけではありません。また個人的に似ていると感じているところも含まれていますのでご注意ください。

白谷雲水峡をモデルにした場面
映画後半「乙事主が血だらけで森の中を歩いていくシーン」
岩や樹木が苔むした感じが白谷雲水峡の風景とよく似ています。


モロの岩屋からの眺めと太鼓岩からの眺め(白谷雲水峡)
右の写真では分かりづらいですが、同じように正面に川が流れています。

